膠原病に随伴する脱毛症状とは|全身性エリテマトーデス(SLE)等の注意点

膠原病に随伴する脱毛症状とは|全身性エリテマトーデス(SLE)等の注意点

膠原病と診断された方、あるいは膠原病の疑いがある方のなかには、髪が抜けていく恐怖と向き合っている方が少なくありません。

全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする膠原病では、免疫の異常が毛包にまで影響を及ぼし、さまざまなタイプの脱毛を引き起こすことが知られています。

脱毛の原因が膠原病にあるのか、それとも別の要因なのかを見極めることは、治療方針を左右する大切な判断です。この記事では、膠原病に伴う脱毛の種類や特徴、受診すべき診療科、そして日常生活で気をつけたいポイントまで、女性の視点からわかりやすくお伝えします。

正しい知識を持つことで、漠然とした不安は「具体的な行動」に変わります。一人で悩まず、まずは情報を整理するところから始めてみましょう。

目次

膠原病で髪が抜ける仕組み|免疫の暴走が毛包を攻撃する

膠原病による脱毛は、自己免疫の異常によって体の免疫細胞が自分自身の毛包を攻撃してしまうことで生じます。通常であれば体を守るはずの免疫が「敵」と「味方」を区別できなくなり、毛根周辺に炎症を起こすのが根本的な原因です。

自己免疫疾患が毛根に炎症を起こすと髪はこうなる

膠原病に属する疾患の多くでは、血液中の自己抗体(じここうたい:自分の体の成分に反応してしまう抗体)が毛包の周囲に集まり、炎症を引き起こします。炎症が軽度であれば毛包は一時的に休止期(きゅうしき)に入り、びまん性の脱毛として現れるでしょう。

一方、炎症が慢性的に持続すると毛包そのものが破壊され、瘢痕性脱毛(はんこんせいだつもう:傷跡が残るタイプの脱毛)へと進行する恐れがあります。瘢痕性脱毛になると、毛穴がふさがってしまうため自然な毛髪再生は見込めません。

非瘢痕性と瘢痕性|2つのタイプで予後が大きく変わる

膠原病による脱毛は「非瘢痕性脱毛(ひはんこんせいだつもう)」と「瘢痕性脱毛」の2つに大きく分けられます。非瘢痕性脱毛は毛包が温存されているため、原疾患の治療によって髪が戻る見込みがあるタイプです。

膠原病における脱毛タイプの比較

分類毛包の状態回復の見込み
非瘢痕性脱毛温存されている原疾患のコントロールで回復が期待できる
瘢痕性脱毛破壊されている自然回復は困難で、早期治療が鍵になる

膠原病の脱毛と女性型脱毛症は見た目が似ていても原因が違う

びまん性に髪が薄くなるパターンは、女性型脱毛症(FPHL)と非常によく似て見えることがあります。しかし膠原病に伴う脱毛は炎症が原因であり、ホルモンバランスの変化が主因であるFPHLとは治療のアプローチがまったく異なります。

頭皮に赤みや鱗屑(りんせつ:フケのようなかさつき)がある場合、あるいは他の全身症状を伴っている場合は、膠原病の可能性を視野に入れて皮膚科やリウマチ科への受診を検討しましょう。

治療薬が脱毛を引き起こすケースにも注意が必要

膠原病の治療に使われる免疫抑制剤やステロイドの一部には、副作用として脱毛を起こすものがあります。メトトレキサートやシクロホスファミドなどが代表的な薬剤です。

治療薬による脱毛は休薬や減量によって改善が見込めるため、主治医への相談が大切です。薬が原因なのか疾患の活動性が原因なのかを見極めることが、適切な対処につながります。

全身性エリテマトーデス(SLE)の脱毛パターンは一つではない

SLEにおける脱毛は患者の最大85%に認められ、非瘢痕性のびまん性脱毛から瘢痕性の円板状病変まで、複数のパターンが混在しうる疾患です。脱毛がSLEの初発症状となるケースも約20%にのぼるとされ、「たかが抜け毛」と見過ごすと診断の遅れにつながりかねません。

SLEのびまん性脱毛は疾患活動性のサインである

SLEの急性期に見られるびまん性脱毛は、疾患の活動性と密接に関係しています。全身の炎症が高まることで毛髪サイクルが乱れ、成長期の毛が一斉に休止期へ移行してしまうのです。

SLEの診断基準(SLICC分類基準)にも「非瘢痕性脱毛」が項目として含まれており、診断上も大切な所見とされています。疾患がコントロールされれば髪の回復が期待できるため、脱毛そのものに対する特別な治療よりも、SLE全体の管理を優先するのが一般的な方針です。

「ループスヘア」と呼ばれる特有の毛髪変化を見逃さない

SLEには「ループスヘア」と呼ばれる特徴的な毛髪変化があります。前頭部の生え際に沿って細く脆い短毛が目立ち、まるでうぶ毛のような外見になるのが特徴です。

ループスヘアは疾患活動期に現れやすく、治療の効果が得られると徐々に正常な毛髪に置き換わっていきます。日常的に鏡で前髪の生え際をチェックする習慣は、SLEの活動性を早期にキャッチする手がかりになるかもしれません。

円板状エリテマトーデス(DLE)は頭皮に瘢痕を残す怖さがある

円板状エリテマトーデス(DLE)は慢性皮膚型ループスの一種で、頭皮に紅斑(こうはん:赤い斑点)や鱗屑を伴う局面を形成します。初期には非瘢痕性であっても、放置すると毛包が線維化して永久的な脱毛に至る点が問題です。

DLEによる瘢痕性脱毛は一度進行すると元には戻りません。頭皮に赤みや萎縮、色素沈着の変化がみられたら早急に皮膚科を受診し、組織検査(生検)で確定診断を受けることが望ましいといえます。

SLEに合併する円形脱毛症も珍しくない

SLE患者は一般集団と比較して円形脱毛症(AA)を合併しやすいことが報告されています。AAは境界明瞭な脱毛斑が突然現れる自己免疫性の疾患ですが、DLEの初期病変と見た目が似ていることがあります。

見た目だけでは鑑別が難しいことも多いため、ダーモスコピー(トリコスコピー)や組織検査による正確な診断が必要になるケースが少なくありません。治療法が異なるため、両者を区別する意味は大きいでしょう。

脱毛パターン特徴回復性
びまん性脱毛全体的に薄くなる。疾患活動性と連動治療で回復が期待できる
ループスヘア前頭部の細く脆い短毛疾患安定後に改善傾向
DLE性瘢痕脱毛局面性の紅斑と萎縮進行すると不可逆的
円形脱毛症合併境界明瞭な脱毛斑自然寛解もあるが再発も多い

SLE以外の膠原病でも脱毛は起こる|皮膚筋炎・強皮症・シェーグレン症候群

膠原病に伴う脱毛はSLEだけの問題ではありません。皮膚筋炎(ひふきんえん)、全身性強皮症(ぜんしんせいきょうひしょう)、シェーグレン症候群など、さまざまな膠原病が髪に影響を与えることが臨床的に確認されています。

皮膚筋炎では頭皮のかゆみと紅斑が脱毛に先行する

皮膚筋炎(DM)は筋力低下と皮膚症状を主徴とする膠原病で、頭皮にも病変が及ぶことがあります。頭皮の皮膚筋炎では紫紅色の紅斑とびまん性の脱毛が特徴的で、強いかゆみを伴うことが多いのが悩みの種です。

脂漏性皮膚炎や乾癬(かんせん)と見た目が似ているため、誤診されることも珍しくありません。かゆみを伴う頭皮の紅斑に筋力低下や皮膚の色素変化が加わったら、皮膚筋炎を疑って精密検査を受けることをおすすめします。

全身性強皮症の脱毛は皮膚の硬化と血行障害が原因になる

全身性強皮症では皮膚の線維化が進行し、頭皮の血行が悪化することで毛髪が細くなったり、抜けやすくなったりします。とくに限局性強皮症の「剣創状(en coup de sabre)」型は、額から頭皮にかけて帯状の瘢痕性脱毛を引き起こすことで知られています。

膠原病別の脱毛特徴まとめ

膠原病の種類脱毛のタイプ主な特徴
全身性エリテマトーデス非瘢痕性・瘢痕性びまん性脱毛、DLEによる局面性脱毛
皮膚筋炎非瘢痕性が多い頭皮の紫紅色紅斑と強いかゆみ
全身性強皮症瘢痕性の場合あり皮膚硬化に伴う血行障害と萎縮
シェーグレン症候群非瘢痕性が主乾燥症状に伴うびまん性の薄毛

シェーグレン症候群でも髪が薄くなることがある

シェーグレン症候群は涙腺(るいせん)や唾液腺(だえきせん)の慢性炎症が特徴的ですが、毛髪への影響も報告されています。非瘢痕性のびまん性脱毛が主なパターンですが、他の膠原病と比べて見逃されやすい傾向があります。

口や目の乾燥に加えて髪のボリュームが減ったと感じたら、シェーグレン症候群の可能性も視野に入れるとよいでしょう。血液検査で抗SS-A抗体や抗SS-B抗体を調べることが診断の手がかりになります。

混合性結合組織病(MCTD)でも脱毛症状が出る場合がある

混合性結合組織病(MCTD)はSLE・皮膚筋炎・強皮症の特徴が重なり合う疾患です。脱毛はMCTDの主症状として注目されることは少ないものの、SLE様の症状として非瘢痕性脱毛がみられるケースが臨床的に確認されています。

MCTDの診断には抗U1-RNP抗体の陽性が特徴的です。複数の膠原病の症状が混在するため、皮膚科だけでなくリウマチ科と連携した総合的な診療が必要になります。

膠原病の脱毛を正しく見分けるための検査と診断のポイント

膠原病による脱毛の診断は、血液検査・ダーモスコピー(トリコスコピー)・組織検査を組み合わせた総合的なアプローチで行われます。自己判断だけでは原因を特定できないため、専門医のもとで適切な検査を受けることが回復への第一歩です。

血液検査で見つかる自己抗体が診断の入り口になる

膠原病の診断では、血液中の自己抗体を調べることが出発点です。抗核抗体(ANA)が陽性であれば膠原病のスクリーニングとして有意な所見ですが、ANA陽性だけでは特定の膠原病を断定できません。

SLEの場合は抗dsDNA抗体や抗Sm抗体、皮膚筋炎では抗Jo-1抗体などの筋炎特異的抗体、強皮症では抗Scl-70抗体や抗セントロメア抗体など、疾患ごとに特徴的な自己抗体パターンがあります。

脱毛が気になる方は、まず一般的な血液検査に自己抗体の項目を加えてもらうことを検討してみましょう。

トリコスコピー(頭皮の拡大観察)で脱毛の性質を見極める

トリコスコピーは頭皮と毛髪を拡大して観察する非侵襲的な検査法で、膠原病による脱毛の鑑別に役立ちます。DLEでは毛穴の角栓(かくせん)や毛穴周囲の紅斑が特徴的で、SLEのびまん性脱毛では毛穴周囲の茶色い散在性色素沈着が報告されています。

皮膚筋炎では拡張蛇行血管や毛穴周囲の赤褐色色素沈着、強皮症では白色パッチや多形性血管パターンなど、疾患ごとに特徴的な所見があるため、経験豊富な皮膚科医による評価が望ましいでしょう。

確定診断には皮膚生検(組織検査)が必要なこともある

トリコスコピーや血液検査だけでは確定できない場合、皮膚生検を行います。頭皮の一部を局所麻酔下で採取し、顕微鏡で炎症の分布や毛包の状態、線維化の程度を評価する検査です。

DLEでは基底膜の肥厚やリンパ球浸潤、毛包の角栓形成などが特徴的な所見として確認されます。非瘢痕性脱毛か瘢痕性脱毛かの判定は、治療方針を左右する重要な分岐点であるため、必要な場合には生検をためらわないことが大切です。

膠原病の脱毛で受診するなら皮膚科とリウマチ科の連携が理想的

膠原病の脱毛は皮膚の問題であると同時に、全身性疾患の一部でもあります。皮膚科で脱毛の詳細な診断を受けつつ、リウマチ科(膠原病内科)で全身管理を行うのが理想的な診療体制です。

脱毛だけを訴えて皮膚科を受診した場合でも、膠原病が疑われれば内科への紹介が検討されます。反対に、リウマチ科で治療中の方が頭皮の変化に気づいたら、担当医に早めに伝えて皮膚科との連携を図ってもらいましょう。

検査法わかること侵襲性
血液検査(自己抗体)膠原病の種類を推定採血のみで負担が少ない
トリコスコピー脱毛の性質・頭皮の炎症所見非侵襲で痛みなし
皮膚生検炎症の詳細・瘢痕の有無局所麻酔下で小切開

膠原病の脱毛に対する治療|原疾患の管理が髪を取り戻す近道になる

膠原病に伴う脱毛の治療は、原疾患のコントロールが中心となります。疾患活動性が落ち着けば、非瘢痕性脱毛の多くは自然に改善へ向かいますが、瘢痕性脱毛には早期介入が求められます。

SLEの活動性を抑えれば髪の回復が見えてくる

SLEに伴う非瘢痕性脱毛は、疾患の活動性が下がれば数か月以内に毛髪の再生が始まるケースが多く報告されています。ヒドロキシクロロキン(HCQ)はSLEの標準治療薬であると同時に、皮膚症状にも効果を発揮するため脱毛対策としても期待されています。

全身のステロイド投与はフレア(疾患の急激な悪化)を抑える橋渡し的な役割で使用されますが、長期使用には副作用のリスクが伴うため、主治医と相談しながら適切な期間と用量で使うことが重要です。

DLEの瘢痕性脱毛は早く治療を始めるほど髪を守れる

DLEによる瘢痕性脱毛は、毛包が破壊される前に炎症を抑えることが唯一の防御策です。外用ステロイドやカルシニューリン阻害薬(タクロリムスなど)の局所治療に加え、全身療法としてHCQが第一選択とされています。

  • 外用ステロイド(強力〜超強力クラス)による局所の炎症抑制
  • ヒドロキシクロロキンの内服による全身的な免疫調節
  • 難治例にはメトトレキサートやミコフェノール酸モフェチルを検討
  • ステロイド局所注射による活動性病変への直接的なアプローチ

皮膚筋炎や強皮症の脱毛も原疾患の治療が基本になる

皮膚筋炎の頭皮病変に対しては、全身的な免疫抑制療法に加えて、外用ステロイドや抗マラリア薬で皮膚症状をコントロールするのが一般的です。強いかゆみに対しては対症療法も並行して行われます。

強皮症に伴う脱毛に対する確立された治療法は限られていますが、皮膚の線維化の進行を抑える全身療法を行いながら、頭皮の保湿や血行促進を図る外用ケアを組み合わせるアプローチが採用されています。

ミノキシジルの補助的な使用で毛髪再生をサポートできる

膠原病の脱毛治療においてミノキシジル(外用・内服)は補助的な手段として用いられることがあります。ミノキシジルは毛包への血流を増やし、毛髪の成長期を延長させる作用があるため、原疾患の治療と併用すると回復を後押しできる場合があるでしょう。

ただし、ミノキシジル単独で膠原病による脱毛を解決できるわけではありません。あくまで原疾患の治療が主軸であり、補助療法という位置づけで主治医の指示のもとに使用するのが安全です。

治療の柱対象となる脱毛備考
原疾患のコントロール非瘢痕性脱毛全般疾患活動性の沈静化が最優先
外用ステロイド・カルシニューリン阻害薬DLEなどの局所病変早期使用で瘢痕化を防ぐ
HCQ(ヒドロキシクロロキン)SLE・DLE・皮膚筋炎第一選択の全身療法
ミノキシジル(外用・内服)補助療法として原疾患治療と併用する

膠原病と脱毛に悩む女性が日常生活で取り入れたいセルフケア

膠原病による脱毛のケアは医療機関での治療だけにとどまりません。毎日の生活習慣を少し見直すだけで、頭皮環境の悪化を防ぎ、治療の効果を後押しすることが期待できます。

紫外線対策は膠原病の脱毛悪化を防ぐ基本中の基本

SLEやDLEの患者さんにとって紫外線は疾患の活動性を高める大きな引き金です。紫外線を浴びることで皮膚症状が悪化し、頭皮の炎症もひどくなる場合があります。

外出時には帽子や日傘を活用し、頭皮への直射日光をできるだけ避けましょう。SPF値の高い日焼け止めを額や耳の周囲に塗ることも有効ですが、頭皮そのものには帽子による物理的な遮光が確実でしょう。

頭皮を刺激しすぎないシャンプーの選び方と洗い方

膠原病で頭皮に炎症がある状態では、洗浄力の強いシャンプーは刺激になりかねません。アミノ酸系など低刺激のシャンプーを選び、ぬるめのお湯で優しく洗うことを心がけてみてください。

すすぎ残しは頭皮トラブルの原因になるため、洗い流す時間は洗う時間の2倍程度をかけるとよいでしょう。タオルドライも擦らずに、押さえるように水分を吸い取るのがポイントです。

ストレスマネジメントと十分な睡眠が免疫バランスを整える

精神的なストレスは免疫バランスを乱し、膠原病のフレアを誘発する要因として知られています。脱毛そのものがストレスとなり、さらに脱毛が進む悪循環に陥りやすいため、意識的にリラックスする時間を設けることは治療の一部といえます。

良質な睡眠は免疫機能の維持に大切な要素です。就寝前のスマートフォン使用を控える、寝室の照明を暗くするなど、睡眠の質を上げる工夫を日常に取り入れてみましょう。

栄養バランスの良い食事で毛髪の土台を支える

毛髪の成長にはタンパク質・鉄分・亜鉛・ビタミンDなどの栄養素が必要です。膠原病の患者さんは慢性的な炎症や治療薬の影響で栄養状態が偏りやすいため、食事のバランスには意識を向ける価値があります。

極端な食事制限やサプリメントの過剰摂取は逆効果になることもあるため、栄養面で不安がある場合は主治医や管理栄養士に相談すると安心です。無理のない範囲で、毎食タンパク質と野菜をバランスよく取り入れることから始めてみてはいかがでしょうか。

  • 紫外線対策として帽子・日傘・日焼け止めを習慣にする
  • 低刺激シャンプーとぬるま湯で頭皮をやさしく洗う
  • 睡眠の質を高めてストレスを溜め込まない生活を心がける
  • タンパク質・鉄分・亜鉛・ビタミンDを意識した食事を取り入れる

膠原病の脱毛が進んでしまった場合|瘢痕性脱毛への対処と植毛という選択肢

瘢痕性脱毛が進行して毛包が失われた部位には、残念ながら薬物治療だけでは毛髪を取り戻せません。しかし疾患が安定した後であれば、自毛植毛によって見た目の改善を図れる場合があります。

瘢痕性脱毛は「不可逆」だからこそ早期発見・早期治療が大切になる

DLEや強皮症による瘢痕性脱毛は、毛包が線維組織に置き換わってしまうと二度と自然には髪が生えてきません。そのため、毛包が残っている段階で炎症を食い止めることが何よりも重要です。

段階毛包の状態治療で期待できること
初期(活動性炎症あり)一部温存炎症抑制で進行を止める
中期(部分的瘢痕化)混在残存毛包の保護と症状安定
後期(完全瘢痕化)消失薬物療法では毛髪再生困難

疾患が安定した後なら自毛植毛の適応を検討できる

膠原病による瘢痕性脱毛に対して自毛植毛が検討されるのは、原疾患が十分にコントロールされ、少なくとも1〜2年程度の安定期間が確認できた場合です。

活動性のある状態で植毛を行うと、移植した毛包も免疫の攻撃を受けてしまう恐れがあるため、タイミングの見極めが非常に大切になります。

植毛を検討する際は、膠原病の主治医と植毛専門医が情報を共有し、双方の視点から適応を判断してもらう体制が望ましいでしょう。焦らず、疾患の安定を最優先にしながら選択肢として心にとどめておくことが賢明です。

ウィッグやヘアピースも心強い味方になる

植毛が適応にならない場合や、治療中の脱毛を目立たなくしたい場合には、医療用ウィッグやヘアピースが有力な選択肢です。近年は素材や技術が進歩し、自然な見た目のものが数多く市販されています。

脱毛による見た目の変化は女性にとって精神的な負担が大きいものです。治療が安定するまでの間、ウィッグを上手に活用して外見を整えることは、QOL(生活の質)を保つ意味でも積極的に検討してよい方法といえます。

よくある質問

膠原病による脱毛は治療すれば元通りに回復しますか?

膠原病による脱毛が回復するかどうかは、脱毛のタイプによって大きく異なります。非瘢痕性脱毛であれば、原疾患の活動性がコントロールされることで毛髪が再び成長を始めるケースが多く報告されています。

一方、DLEなどによる瘢痕性脱毛は毛包が破壊されてしまうため、進行した部分の毛髪再生は困難です。早い段階で治療を開始するほど毛包を守れる可能性が高まるため、頭皮の変化に気づいたら速やかに受診することをおすすめします。

膠原病の脱毛と一般的な女性の薄毛はどのように見分ければよいですか?

膠原病の脱毛は頭皮に紅斑・鱗屑・萎縮などの炎症所見を伴うことが多い一方、女性型脱毛症では頭皮自体は正常に見える場合がほとんどです。膠原病では関節痛・発熱・口内炎・皮疹など全身的な症状が並行して現れることも鑑別の手がかりになります。

ただし、見た目だけでの判断は難しい場合もあるため、血液検査やトリコスコピーなどの専門的な検査を受けて原因を明確にすることが大切です。

膠原病で脱毛がある場合、自毛植毛を受けることはできますか?

膠原病の疾患活動性が十分に落ち着き、少なくとも1〜2年程度の安定期間が確認できた場合に限り、自毛植毛の適応が検討されることがあります。活動性のある状態で植毛を行うと、移植した毛包が免疫の攻撃を受けてしまうリスクがあるためです。

自毛植毛を検討される際は、膠原病の主治医と植毛専門医の双方に相談し、疾患の状態と頭皮の状況を総合的に判断してもらうことが必要です。

膠原病の脱毛症状を悪化させないために日常生活で気をつけるべきことは何ですか?

膠原病の脱毛悪化を防ぐために、まず徹底していただきたいのが紫外線対策です。とくにSLEやDLEの方は紫外線が疾患の活動性を高める要因になるため、帽子・日傘・日焼け止めの使用を習慣にしてください。

頭皮への過度な刺激を避けることも大切です。低刺激シャンプーを使い、ぬるめのお湯で優しく洗い、十分にすすぎましょう。ストレスの管理や良質な睡眠も免疫バランスの維持に関わるため、生活全体を整える意識が脱毛予防につながります。

膠原病の脱毛がある場合、何科を受診するのが適切ですか?

膠原病による脱毛が疑われる場合は、皮膚科とリウマチ科(膠原病内科)の両方を受診できる体制が理想的です。皮膚科では頭皮の詳しい観察や組織検査を行い、脱毛の原因やタイプを特定します。

リウマチ科では血液検査や全身状態の評価を通じて膠原病の活動性を判断し、全身的な治療方針を決定します。両科が連携することで、脱毛への対処と膠原病全体の管理を同時に進められるため、可能であれば両方の診療科がある医療機関を選ぶとよいでしょう。

References

Concha, J. S. S., & Werth, V. P. (2018). Alopecias in lupus erythematosus. Lupus Science & Medicine, 5(1), e000291. https://doi.org/10.1136/lupus-2018-000291

Desai, K., & Miteva, M. (2021). Recent insight on the management of lupus erythematosus alopecia. Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology, 14, 333–347. https://doi.org/10.2147/CCID.S269008

Udompanich, S., Chanprapaph, K., & Suchonwanit, P. (2018). Hair and scalp changes in cutaneous and systemic lupus erythematosus. American Journal of Clinical Dermatology, 19(5), 679–694. https://doi.org/10.1007/s40257-018-0363-8

Chanprapaph, K., Limtong, P., Ngamjanyaporn, P., & Suchonwanit, P. (2022). Trichoscopic signs in dermatomyositis, systemic lupus erythematosus, and systemic sclerosis: A comparative study of 150 patients. Dermatology, 238(4), 677–687. https://doi.org/10.1159/000520297

Cassano, N., Amerio, P., D’Ovidio, R., & Vena, G. A. (2014). Hair disorders associated with autoimmune connective tissue diseases. Giornale Italiano di Dermatologia e Venereologia, 149(5), 555–565.

Parodi, A., & Rebora, A. (2014). Hair loss in autoimmune systemic diseases. Giornale Italiano di Dermatologia e Venereologia, 149(1), 79–81.

Werth, V. P. (2013). Autoimmune disease and hair loss. Dermatologic Clinics, 31(1), 1–8.

Starace, M., Iorizzo, M., Trüeb, R. M., Richert, B., & Piraccini, B. M. (2023). Hair disorders in autoimmune diseases. Skin Appendage Disorders, 9(2), 84–95. https://doi.org/10.1159/000528835

Kwiatkowska, M., Rakowska, A., Walecka, I., & Rudnicka, L. (2016). The diagnostic value of trichoscopy in systemic sclerosis. Journal of Dermatological Case Reports, 10(2), 21–25. https://doi.org/10.3315/jdcr.2016.1225

Al-Refu, K., Edward, S., Ingham, E., & Goodfield, M. (2009). Expression of hair follicle stem cells detected by cytokeratin 15 stain: Implications for pathogenesis of the scarring process in cutaneous lupus erythematosus. British Journal of Dermatology, 160(6), 1188–1196. https://doi.org/10.1111/j.1365-2133.2009.09074.x

病気による女性の薄毛に戻る

女性の薄毛・FAGAの原因と種類TOP

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Dr.本田マイケル 武史のアバター Dr.本田マイケル 武史 MYCLI 統括院長 / 医療法人史真会 理事長

がん研有明病院や聖路加国際病院の形成外科にて、長年にわたり顕微鏡を用いた微細な手術(マイクロサージャリー)や組織移植に携わってきました。 自毛植毛において最も重要なのは、採取したドナー(毛根)をいかにダメージなく扱い、高い「生着率」を実現するか、そして自然な流れを再現するかです。私が再建外科の最前線で培ってきた、0.1ミリ単位の緻密な組織操作技術は、まさに自毛植毛のクオリティに直結します。「ただ増やす」だけでなく、形成外科医としての解剖学的知識に基づいた、安全で確実な毛髪再生医療をご提供します。

目次