産後の抜け毛は多くの女性が経験する一時的な現象ですが、1年以上続く場合は注意が必要です。通常はホルモンバランスの回復とともに1年程度で自然に収束します。
しかし、期間が過ぎても改善しない場合、育児ストレスや栄養不足、あるいはFAGA(女性男性型脱毛症)の可能性があります。
本記事では、産後の抜け毛とFAGAの違い、それぞれの原因に基づいた対策、専門的なケアが必要なタイミングを解説します。正しい知識で不安を解消し、健やかな髪を取り戻しましょう。
産後の抜け毛(分娩後脱毛症)の基本と回復までの目安
産後の抜け毛は、出産に伴う急激なホルモンバランスの変化による一時的な現象です。通常は産後半年から1年程度で、自然に元の毛量へと戻っていきます。
出産を終えた女性の多くが直面する「分娩後脱毛症」は、決して珍しいことではありません。
お風呂の排水溝に溜まる髪の毛や、ブラッシングのたびに抜ける大量の髪を見て不安になる方は多いでしょう。しかし、これは体が妊娠前の状態に戻ろうとする正常な反応の一部です。
なぜこのような抜け毛が起こるのか、そして通常はどのような経過をたどるのかを正しく理解することが、不安を和らげる第一歩となります。
ホルモンバランスの変化とヘアサイクルの関係
妊娠中、女性の体内では「エストロゲン」と「プロゲステロン」という女性ホルモンが大量に分泌されています。特にエストロゲンには、髪の成長期を延長し、本来抜けるはずの髪を維持する作用があります。
そのため、妊娠中は髪が抜けにくくなり、一時的に毛量が増えたように感じることがあるのです。
しかし、出産を終えると、これらのホルモン分泌量は妊娠前の通常レベルにまで急激に減少します。すると、妊娠中に成長期を維持していた髪が一斉に「休止期」へと移行します。
これまで抜けるのを待っていた髪がまとめて抜け落ちるため、一時的に大量の脱毛が発生するわけです。これが産後の抜け毛の正体であり、ヘアサイクルが正常に戻ろうとする過程で起こる生理的な現象と言えます。
通常いつまで続くのか?ピークと収束時期
産後の抜け毛が始まる時期には個人差がありますが、一般的には産後2ヶ月から3ヶ月頃に始まることが多いです。
その後、産後4ヶ月から6ヶ月頃に抜け毛のピークを迎えます。この時期が最も薄毛が気になりやすいタイミングとなるでしょう。
時期ごとの髪の状態と体内の変化を整理しましたので、ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
産後抜け毛の時期ごとの状態変化
| 時期 | 髪と頭皮の状態・体内の変化 |
|---|---|
| 産後2〜3ヶ月 | ブラッシング時等の抜け毛が急増し、生え際が気になり出す。女性ホルモンが急減し数値が戻る時期。 |
| 産後4〜6ヶ月 | 抜け毛の量がピークに達する。育児疲労も蓄積しやすく、全体のボリュームダウンが目立つ。 |
| 産後6ヶ月〜1年 | 抜け毛が徐々に減り、短い新生毛(アホ毛)が生え始める。ホルモンバランスが安定してくる。 |
| 産後1年以上 | 通常は元の毛量に戻る。戻らない場合は慢性的な要因やFAGAの疑いがある。 |
ピークを過ぎると、徐々に新しい髪が生え始め、抜け毛の量は落ち着いていきます。多くのケースでは、産後1年を迎える頃にはヘアサイクルが正常化し、毛量も回復します。
完全に戻るまでにはさらに数ヶ月を要することもありますが、重要なのはこの抜け毛には明確な終わりがあるという点です。焦らずに体の回復を待つ姿勢が大切です。
1年以上続く場合に疑うべき別の原因
もし産後1年が経過しても抜け毛が減らない、あるいは薄毛が改善する兆しが見られない場合は、別の要因を疑う必要があります。
通常の産後脱毛であれば、ホルモンバランスの安定とともに自然治癒する傾向にありますが、1年以上続く場合は慢性的な問題が潜んでいることが多いのです。
例えば、育児による極度の疲労やストレス、栄養不足、あるいは加齢に伴う変化などが複雑に絡み合っている場合があります。
また、後述するFAGA(女性男性型脱毛症)の発症や、甲状腺機能の異常などの疾患が隠れている可能性も否定できません。
1年という期間は一つの目安です。この時期を過ぎても改善しない場合は、生活習慣の見直しや専門家への相談を検討すべきタイミングと言えます。
1年以上抜け毛が戻らない場合に疑うべき3つの要因
産後1年を経過しても薄毛が改善しない背景には、育児特有の「ストレス・睡眠不足」、回復を遅らせる「栄養不足」、そして年齢に伴う「加齢変化」が大きく関与しています。
産後の生活は、それまでのライフスタイルとは一変します。自分自身のケアよりも赤ちゃんの世話が最優先となるため、髪の成長に必要な条件を欠いてしまうことがあります。
ホルモンバランス自体は戻っていても、髪を育てる土壌である身体の状態が整っていなければ、豊かな髪は戻ってきません。長期化する薄毛の原因として特に多い3つの要因を見ていきましょう。
育児ストレスや睡眠不足による自律神経の乱れ
慣れない育児へのプレッシャーや、夜泣きによる慢性的な睡眠不足は、自律神経のバランスを大きく崩す原因となります。
常に気が張っている状態では、活動モードの「交感神経」が優位になり続けます。すると血管が収縮し、全身の血流が悪化してしまいます。
頭皮への血流が滞ると、毛根に必要な酸素や栄養が十分に届きません。その結果、髪は太く育つ前に抜け落ちてしまったり、新しい髪が生えにくくなったりするのです。
質の良い睡眠中に分泌される成長ホルモンも髪の修復には不可欠ですが、細切れの睡眠ではその恩恵も受けにくくなります。この悪循環が、回復を妨げる大きな要因となります。
無理なダイエットや授乳による栄養不足
産後太りを気にして食事制限を行うことや、母乳育児によって多くの栄養が排出されることは、深刻な栄養不足を招きます。
髪は生命維持に直接関わらない組織であるため、栄養が不足した際、身体は臓器などの重要器官へ優先的に栄養を送ります。結果として、髪への栄養供給は後回しにされてしまうのです。
特に髪の主成分であるタンパク質や、血液を作る鉄分などが不足すると、健康な髪を作ることができません。
忙しさから食事をパンやおにぎりだけで済ませてしまう食生活も、慢性的な栄養不足を引き起こし、薄毛の回復を遅らせてしまいます。
日常生活で確認すべきチェックポイント
ご自身の生活習慣が髪の回復を妨げていないか、以下のポイントを確認してみてください。当てはまる数が多いほど、生活習慣の見直しが必要です。
- 夜間の授乳や夜泣き対応で、まとまった睡眠時間が3時間以下になる日が続いている
- 食事はおにぎりやパン、麺類などの炭水化物のみで済ませることが多い
- 産前の体重に戻そうと、カロリー制限や食事抜きダイエットを行っている
- 育児や家事に対する「完璧主義」の傾向があり、常に強い責任感を感じている
- 手足の冷えがひどく、慢性的な肩こりや首の凝りを感じている
- 産後、肌の乾燥や爪の割れやすさなど、髪以外の部分にも不調が現れている
加齢や体質変化によるヘアサイクルの乱れ
近年は出産年齢が高くなっている傾向もあり、産後の回復期とエイジングによる髪質の変化が重なるケースが増えています。
30代後半から40代になると、女性も加齢により毛細血管が減少し、毛母細胞の活力が低下し始めます。若い頃であればスムーズに回復できたとしても、年齢を重ねている場合は回復力が追いつきません。
その結果、そのまま薄毛の状態が定着してしまうことがあります。また、出産を機に体質が変わり、頭皮が乾燥しやすくなることもあります。
これらが複合的に作用し、ヘアサイクルが乱れたままとなり、成長期が短縮してしまう現象が起こるのです。
FAGA(女性男性型脱毛症)の特徴と産後脱毛との違い
FAGAは進行性の脱毛症であり、全体的に髪が細くなり地肌が透ける特徴があります。一時的な産後脱毛とは異なり自然治癒は難しいため、早期の適切な治療が必要です。
産後の抜け毛が戻らないと悩む女性の中には、実はFAGAを発症しているケースが少なくありません。
FAGAは「女性男性型脱毛症」の略で、近年ではFPHL(女性型脱毛症)とも呼ばれます。産後の抜け毛とFAGAは、原因も対処法も全く異なるため、両者の違いを明確に理解することが重要です。
FAGAの特徴的な症状と進行パターン
男性のAGAが生え際や頭頂部から局所的に薄くなるのに対し、女性のFAGAは頭部全体の髪が細く弱々しくなり、全体のボリュームがダウンするのが特徴です。
これを「びまん性脱毛」と呼びます。髪の分け目が広がって見えたり、頭頂部の地肌が透けて見えたりすることで気づく場合が多いでしょう。
FAGAは進行性であるため、放置しても自然に改善することはありません。初期段階では抜け毛の増加よりも「髪のハリ・コシがなくなった」といった変化を感じることが多いです。
徐々にヘアサイクルの成長期が短くなり、髪が太く育つ前に抜け落ちてしまうため、産毛のような短い髪が増えていきます。
産後脱毛とFAGAの見分け方
最大の違いは「時期」と「経過」です。前述の通り、産後脱毛は産後1年程度で自然に回復に向かいます。一方、FAGAには明確な終わりがなく、時間の経過とともに徐々に進行していきます。
両者の違いを比較表にまとめました。ご自身の症状がどちらに近いか確認してみましょう。
産後脱毛とFAGAの比較表
| 項目 | 産後の抜け毛 | FAGA(女性男性型脱毛症) |
|---|---|---|
| 主な原因 | 出産に伴うホルモンバランスの急激な変化 | ホルモンバランスの乱れ、遺伝、加齢など |
| 発症時期 | 産後2〜3ヶ月頃から始まり、1年程度で収束 | 時期を問わず発症し、閉経前後に増加する |
| 進行性 | 一時的(自然回復する) | 進行性(放置すると徐々に悪化する) |
| 薄毛の特徴 | 全体的に一気に抜ける、生え際が目立つことも | 頭頂部や分け目を中心に全体が薄くなる |
| 抜け毛の状態 | 通常の太さの髪が多く抜ける | 細く短い、成長しきっていない髪が多く抜ける |
また、抜け毛の質にも違いが見られます。産後脱毛では、成長途中の髪も含めて一気に抜けるため、長い髪も短い髪も混在して抜けます。
対してFAGAでは、十分に成長しきれなかった細く短い髪(軟毛)が抜ける割合が増えます。
もし、産後1年以上経過しても分け目の広がりが進行している場合や、抜けた髪が以前より明らかに細くなっている場合は、FAGAの可能性を疑います。
遺伝的要因とホルモン感受性の関係
FAGAの発症には、遺伝的な背景やホルモン感受性が関係しています。女性ホルモンが減少する更年期に発症しやすい疾患です。
しかし、遺伝的に男性ホルモンの感受性が高い方は、20代や30代の若い時期から発症することもあります。
出産後は女性ホルモンが急激に減少するため、一時的にホルモンバランスが更年期に近い状態になります。
このタイミングで、潜在的に持っていたFAGAの要因が引き金となり、症状が表面化することがあるのです。
母親や祖母など血縁者に薄毛の方がいる場合は、遺伝的な体質を受け継いでいる可能性があります。より注意深く頭皮の状態を観察する必要があるでしょう。
産後の抜け毛とFAGAが併発するケースとリスク要因
産後の抜け毛とFAGAは別々の現象ですが、これらが同時に起こる「併発」のケースも珍しくありません。潜在していたFAGAが顕在化することで、薄毛が長期化することがあります。
「産後の抜け毛だと思っていたけれど、いつまで経っても治らない」という場合、最も可能性が高いのがこの併発パターンです。
産後脱毛の時期が終わっても、FAGAの症状が進行し続けているため、バトンタッチするように薄毛の状態が続いてしまうのです。
この併発を見逃してしまうと、適切な対策が遅れ、回復が難しくなることもあります。
隠れていたFAGAが産後をきっかけに顕在化する
もともとFAGAになりやすい体質を持っていた方が、出産という大きな身体的ストレスをきっかけにスイッチが入ってしまうことがあります。
妊娠中は豊富な女性ホルモンによって守られていた髪が、出産後にホルモンが減少することで守りを失います。そこに育児のストレスや栄養不足が追い打ちをかける形になるのです。
このように、産後脱毛による一時的な抜け毛と、FAGAによる慢性的な薄毛の進行が重なると、見た目にも急激にボリュームが減ったように感じられます。
特に併発のリスクが高い方の特徴をまとめました。ご自身に当てはまる項目がないか確認してください。
併発リスクが高い人の特徴と注意点
| リスク要因 | 詳細と注意点 |
|---|---|
| 高齢出産である | 35歳以上の出産では、加齢によるホルモン減少と産後の変化が重なり、回復力が低下しやすい傾向 |
| 血縁者に薄毛の人がいる | 両親や祖父母に薄毛の傾向がある場合、FAGAの遺伝的素因を持っている可能性が高くなる |
| 産前から髪が細かった | 妊娠前から髪のボリュームダウンを感じていた場合、すでにFAGAが始まっていた可能性がある |
| 過度なダイエット経験 | 長期的な栄養不足の履歴は、頭皮環境の基盤を弱めていることがあり、産後のダメージを受けやすくなる |
| 生理不順の経験 | もともとホルモンバランスが乱れやすい体質の方は、産後のホルモン変動の影響も強く受ける可能性がある |
産後1年を過ぎて抜け毛の量は減ったものの、以前のような髪の密度が戻らない、髪質が変わってしまったという場合は、この併発を強く疑います。
甲状腺機能低下症など他の疾患との鑑別
産後の抜け毛が長引く場合、FAGA以外にも注意すべき疾患があります。代表的なものが「甲状腺機能低下症(橋本病など)」です。
産後は甲状腺の機能に異常が出やすい時期でもあります。甲状腺ホルモンは全身の代謝を司るため、この機能が低下すると、脱毛、倦怠感、むくみなどの症状が現れます。
甲状腺疾患による抜け毛は、一般的な育毛ケアでは改善しません。適切な内科的治療が必要です。単なる産後の疲れや薄毛と自己判断せず、体調不良を伴う場合は医師の診断を仰ぐことが大切です。
専門機関での診断が必要なサイン
自分での判断が難しい場合、専門機関での診断が確実な解決への近道となります。
特に頭皮に赤みや痒み、フケなどの炎症症状を伴う場合や、円形脱毛症のように局所的に髪が抜けている場合は、皮膚科での受診が必要です。
また、FAGAかどうかを判断するには、マイクロスコープで毛根の状態を確認したり、血液検査でホルモン値を調べたりすることが有効です。
自己流のケアで時間を浪費する前に、一度客観的な診断を受けることで、自分に合った正しい対策が見えてきます。
食事と栄養管理で髪の成長をサポートする方法
髪は食べたものから作られます。特に産後は多くの栄養を必要とするため、髪の原料となるタンパク質やミネラルを意識的に摂取することが、薄毛改善への近道です。
育児に追われる毎日の中で、自分の食事は後回しになりがちです。しかし、体の内側からの栄養補給なしに、どんなに高価な育毛剤を使っても効果は限定的です。
まずは日々の食事を見直し、髪を育てるための土台作りを行うことが重要です。無理に凝った料理を作る必要はありません。手軽に取り入れられる食材を選び、効率よく栄養を摂取しましょう。
タンパク質とミネラルを重視した食事の摂り方
髪の毛の約90%は「ケラチン」というタンパク質で構成されています。そのため、良質なタンパク質の摂取は最優先事項と言えます。
肉、魚、卵、大豆製品を毎食手のひらサイズ分程度食べることを意識します。植物性と動物性のタンパク質をバランスよく摂ることが大切です。
また、摂取したタンパク質を髪に変えるためには「亜鉛」などのミネラルが必要です。
亜鉛は牡蠣やレバー、ナッツ類に多く含まれますが、吸収率があまり良くありません。ビタミンCと一緒に摂ることで吸収を高める工夫をしましょう。
具体的にどのような食材が髪に良いのか、代表的な栄養素をまとめました。日々の献立の参考にしてください。
髪の成長を助けるおすすめ栄養素と食材
| 栄養素 | 働き | 多く含まれる食材 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の毛の主成分(ケラチン)となる材料 | 鶏肉、魚、卵、納豆、豆腐、チーズ |
| 亜鉛 | タンパク質を髪に合成する際に必要なミネラル | 牡蠣、レバー、牛肉、アーモンド、ごま |
| 鉄分 | 血液中の酸素を運び、頭皮への栄養供給を助ける | レバー、ほうれん草、ひじき、カツオ |
| ビタミンB群 | 頭皮の皮脂バランスを整え、代謝を促進する | 豚肉、レバー、うなぎ、玄米、マグロ |
| ビタミンE | 血行を促進し、抗酸化作用で頭皮の老化を防ぐ | アボカド、アーモンド、オリーブオイル |
サプリメントの上手な活用
理想は食事から全ての栄養を摂ることですが、産後の忙しい時期には現実的に難しいこともあります。そのような場合は、サプリメントを補助的に活用することを推奨します。
特に産後ママ向けのマルチビタミンや、亜鉛、鉄分、葉酸が含まれたサプリメントは、手軽に不足分を補うことができます。
ただし、サプリメントはあくまで補助食品です。基本は食事であることを忘れず、特定の成分だけを過剰摂取しないように注意します。
授乳中の場合は、念のため医師や薬剤師に相談してから服用すると安心です。
髪に良くない食習慣を避ける
髪に良いものを食べるのと同時に、髪に悪影響を与える食習慣を避けることも大切です。
例えば、過度な糖質の摂取は「糖化」を引き起こし、頭皮の老化を早める原因となります。スナック菓子や甘いジュースの摂りすぎには注意します。
また、脂っこい食事は皮脂の過剰分泌を招き、頭皮環境を悪化させる可能性があります。
冷たい飲み物や食べ物を頻繁に摂ると内臓が冷え、血流が悪くなるため、できるだけ温かいものを摂るように心がけましょう。
頭皮環境を整える生活習慣とヘアケアのポイント
日々の生活習慣やヘアケアの方法を少し見直すだけで、頭皮環境は大きく改善します。自宅でできるケアを継続することが、健やかな髪を育む土台となります。
育児中は自分の時間が取れず、入浴や睡眠もおろそかになりがちです。しかし、頭皮環境の悪化は抜け毛を助長させます。
特別なケアを長時間行う必要はありません。毎日のルーティンの中で、少しだけ「髪への優しさ」を意識することで、頭皮への負担を減らすことができます。
今日からすぐに取り組めるケア方法をリストアップしました。できるところから始めてみましょう。
今日からできる頭皮ケアリスト
- シャンプーはアミノ酸系の低刺激なものに変え、38度前後のぬるま湯ですすぐ
- 洗髪後は自然乾燥させず、タオルドライ後にドライヤーで素早く乾かす
- ドライヤーは頭皮から20cm以上離し、熱風を一箇所に当て続けないようにする
- 日中は髪を強く縛りすぎないようにし、頭皮への牽引性(けんいんせい)の負担を減らす
- 寝る1時間前にはスマホやテレビを見ないようにし、脳をリラックスさせる
- 紫外線は頭皮の老化を早めるため、外出時は帽子や日傘を使用する
頭皮に優しいシャンプー選びと洗い方
産後の頭皮は敏感で乾燥しやすい状態になっています。洗浄力が強すぎる高級アルコール系シャンプーは避け、刺激の少ない「アミノ酸系シャンプー」を選ぶことをおすすめします。
アミノ酸系は必要な皮脂を残しつつ汚れを落とすため、頭皮のバリア機能を守ります。
洗髪時は、爪を立てずに指の腹を使って優しくマッサージするように洗います。ゴシゴシ洗いは頭皮を傷つけ、炎症の原因となります。
また、すすぎ残しはフケや痒みの原因になるため、シャンプーよりも時間をかけて丁寧にお湯で洗い流すことが重要です。
質の高い睡眠を確保するための工夫
赤ちゃんの夜泣きなどでまとまった睡眠をとるのが難しい時期ですが、髪の成長ホルモンは睡眠中に分泌されます。
睡眠「時間」の確保が難しい場合は、睡眠の「質」を高めることに注力しましょう。寝る直前までのスマホ操作を控える、日中に短時間でも日光を浴びて体内時計を整えるといった工夫が有効です。
また、赤ちゃんが昼寝をしている時に一緒に仮眠をとるなどして、こまめに休息を補うことも大切です。体の疲れをとることは、頭皮の疲れをとることにも繋がります。
血行を促進する頭皮マッサージ
頭皮が硬くなると血流が悪くなり、毛根に栄養が届きにくくなります。隙間時間に簡単な頭皮マッサージを行うことで、血行を促進し、頭皮を柔らかく保つことができます。
耳の上から頭頂部に向かって、頭皮を持ち上げるように優しく動かします。首筋や肩のストレッチも合わせて行うと、頭部への血流がよりスムーズになります。
育毛剤を使用する場合は、マッサージと併用することで浸透率が高まり、より効果を期待できます。
専門的な治療を検討すべき状況と治療の選択肢
セルフケアで改善が見られない場合や、FAGAの進行が疑われる場合は、専門クリニックでの治療が有効です。医学的根拠に基づいた治療で、効率的に薄毛の悩みを解決へ導きます。
「病院に行くほどではないかも」と躊躇している間に、薄毛が進行してしまうこともあります。特にFAGAが関与している場合、早期治療がカギとなります。
現在は女性専門の薄毛治療クリニックも増えており、プライバシーに配慮された環境で相談することができます。どのような治療法があるのか、その選択肢を見ていきましょう。
女性専門の頭皮治療(内服薬・外用薬)
初期の治療として一般的なのが、内服薬や外用薬による薬物療法です。例えば、頭皮の血流を促進し発毛を促す「ミノキシジル」の外用薬は、女性の薄毛治療において世界的に認められています。
また、ホルモンバランスを整える薬などが処方されることもあります。これらは医師の診断のもと、個々の症状や体質、授乳中かどうかなどを考慮して処方されます。
市販薬よりも高濃度の成分を使用できるため、より高い効果を期待できるでしょう。
注入治療(メソセラピー)と自毛植毛
内服薬や外用薬に加えて、頭皮に直接有効成分を注入する「注入治療(メソセラピー)」という選択肢もあります。
成長因子やビタミンを直接届けるため、薬物療法に比べて効果の発現が早い傾向があります。より早く効果を実感したい方に選ばれています。
さらに、確実な改善を求める場合には「自毛植毛」という外科的な方法もあります。自分の後頭部の髪を薄い部分に移植する手術です。
定着すれば自分の髪として生え続けるため、メンテナンスの手間がありません。それぞれの治療法の特徴を比較して、自分に合う方法を検討してください。
主な治療法の比較
| 治療法 | 内容と特徴 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
| 外用薬(ミノキシジル等) | 頭皮に直接塗布し、血流改善や発毛促進を行う。自宅で手軽に続けられる。 | 初期の薄毛、まずは手軽に治療を始めたい人。 |
| 内服薬 | 体の中から発毛環境を整える。栄養補給やホルモン調整など種類は様々。 | 全体的なボリュームダウン、生活習慣も乱れがちな人。 |
| 注入治療 | 頭皮に有効成分を直接注入。薬物療法より効果発現が早い傾向がある。 | より早く効果を実感したい人、投薬だけでは改善しなかった人。 |
| 自毛植毛 | 自分の髪を移植する外科手術。定着すれば半永久的に生え続ける。 | 確実な効果を求める人、進行した薄毛の人。 |
よくある質問
- 2人目出産後の方が抜け毛はひどくなりますか?
-
1人目の時よりも2人目以降の方が抜け毛を重く感じる方は多くいます。
これは、加齢により母体の回復力が低下していることや、上の子の世話も加わり育児負担が増えていることが要因と考えられます。
必ずしもひどくなるとは限りませんが、環境要因により回復に時間がかかる傾向があります。
- 授乳を続けると抜け毛は治らないのでしょうか?
-
授乳中であること自体が抜け毛の直接的な原因となり、治らなくなるということはありません。
ただし、授乳により多くの栄養が母乳に使われるため、母体が栄養不足になりやすい状態です。
意識的に食事量を増やし、栄養バランスを整えることで、授乳を続けながらでも髪の回復を目指すことは十分に可能です。
- 市販の育毛剤は産後すぐに使っても大丈夫ですか?
-
「産後・授乳中使用可能」と記載されている育毛剤であれば使用できます。
しかし、産後の頭皮は非常にデリケートなため、アルコール成分が強いものや刺激の強いものは避けた方が無難です。
使用前にパッチテストを行うか、無添加や低刺激を謳っている製品を選ぶことを推奨します。心配な場合は使用前に医師に相談してください。
- 産後の抜け毛対策に効果的なサプリメントはありますか?
-
特定の製品を挙げることはできませんが、成分としては「亜鉛」「鉄分」「ビタミンB群」「葉酸」などが含まれているものが効果的です。
これらは髪の生成やホルモンバランスの調整に役立ちます。産後用や授乳期用としてバランスよく配合されたマルチビタミン・ミネラルのサプリメントを選ぶのが手軽で安心です。
- 白髪も増えた気がするのですが関係ありますか?
-
産後は抜け毛だけでなく、白髪が増えることも珍しくありません。
これは抜け毛と同様に、ホルモンバランスの変化、栄養不足、ストレス、睡眠不足により、メラノサイト(色素細胞)の働きが一時的に低下するためと考えられます。
体調が戻れば黒髪に戻ることもありますが、加齢の影響もあるため、生活習慣を整えて様子を見ることが大切です。
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