2024.04.26
モンドール病とは?胸のしこりの原因、正しい対処法を解説!

「モンドール病ってなに?」
「豊胸した後に、胸に細い筋のようなしこりを感じて心配・・・」
「胸が引きつるように痛いけれど、これって大丈夫?」
こんな不安を持つ皆様に向けた記事です。
お胸の手術を検討している方は手術でモンドール病という病気になる可能性があると知り、不安に感じるかもしれません。
豊胸手術などのお胸の手術はモンドール病の原因となる可能性があります。しかし、頻度は決して高くありません。
本記事では、モンドール病とは何か、モンドール病の6つの原因、そしてモンドール病の治療について詳しく解説します。
目次
モンドール病とは?
モンドール病は、血管に生じる疾患の一つであり、皮膚の下の静脈やリンパ管が硬くなる血栓性静脈炎の一種です。
フランスの外科医Henri Mondorが1939年に報告したことからモンドール病と名付けられました。
モンドール病は当初お胸に発生する索状のしこりとして報告されましたが、後に腹部、鼡径部、腋窩、陰茎に発生する同様の索状結節も報告されています。
正式な分類は確立されていませんが、一般に胸腹部に発生した場合が従来のモンドール病、腋窩や陰茎など他の部位に発生した場合はモンドール病の亜種と認識されています。
モンドール病の主な症状は索状のしこりである
モンドール病の症状として以下の症状が考えられます。
- 索状のしこり
- 腫れ
- 痛み
モンドール病の典型的な症状は、お胸に索状のしこりを触れることです。腫れとして症状を自覚する方もいます。
痛みを感じる方もいますが、モンドール病によって痛みを伴うことはほとんどないと報告されています。
モンドール病の症状は自然に治癒することが多いと言われています。しかし、心配な場合、痛みが強い場合、そして症状が持続する場合は医師の診察を受ける必要があります。
引用元:Goldman et al, J Cutan Aesthet Surg, 2018 Figure 2 (A) Mondor’s thrombophlebitis 2 years after augmentation mammoplasty. (B) The same patient 2 weeks after clinical treatment
モンドール病の発生率は決して高くない
モンドール病の発生率は0.07〜0.96%と報告されています。
しかし、モンドール病の正確な診断定義は確立されていません。さらに、重大な症状を呈する可能性は低く、患者が気に留めないこと、医師もあまり注意を払わないこともあり正確な発生率を把握することは難しいでしょう。
さらに、適切なアフターフォローを行えば、多くの方が自然に軽快します。
出典:Amano et al, Intern Med, 2018
モンドール病の6つの原因
モンドール病の正確な原因ははっきりしていません。
しかし、以下の項目はモンドール病と関連している可能性があります。
- 外傷
- 激しい運動
- きつい衣服や下着
- お胸の手術
- 血管炎
- 乳がん
以下で1つずつ深掘りします。
外傷
モンドール病に関連すると考えられる1つ目の原因は外傷です。
なぜなら、外傷によって血流やリンパ流が滞る可能性があるからです。
外傷による損傷は血流やリンパ流をうっ滞させ、モンドール病の原因となり得ます。
外傷による血流やリンパ流のうっ滞は自然治癒が難しいこともあり、治療には外科的な介入を検討する可能性もあります。
激しい運動
モンドール病に関連すると考えられる2つ目の原因は激しい運動です。
なぜなら、激しい運動によって局所の血流やリンパ流が滞る可能性があるからです。
激しい運動によるモンドール病は自然に治癒する可能性が高いと考えられます。
きつい衣服や下着
モンドール病に関連すると考えられる3つ目の原因はきつい衣服や下着です。
きつい衣服や下着も局所的な血流・リンパ流のうっ滞を引き起こすことがあり、モンドール病の原因となる可能性があります。
きつい衣服や下着による局所の血流やリンパ流のうっ滞は一時的で自然に治癒する可能性が高いと考えられます。
お胸の手術
モンドール病に関連すると考えられる4つ目の原因はお胸の手術です。
なぜなら、お胸の手術は微細な血管・リンパ管を切断する必要があるからです。
お胸の手術においては安全に手術を行うため基本的に血管やリンパ管を適切に処理を行います。しかし、肉眼では確認できないような血管・リンパ管を全て処理することは難しいです。
手術による微細な血管やリンパ管の損傷は出血・リンパ漏として問題になる可能性は極めて低いです。
一部の方では術後に血流・リンパ流のうっ滞を引き起こしモンドール病の原因となることがあります。
具体的には豊胸手術や乳がん手術はモンドール病のリスクとなります。
お胸の美容手術に限ったモンドール病の発生率は0.46%であったとする報告もあり、頻度は高くないと考えてよいでしょう。
豊胸術後の経過が不安を感じる方は、施術前の情報不足や準備不足が原因になることも。詳細はこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
モンドール病は一部の方で手術治療などを行うことがありますが、自然治癒することが多いです。モンドール病の治療については後ほど詳しく解説します。
出典:Goldman et al, J Cutan Aesthet Surg, 2018
血管炎
モンドール病に関連すると考えられる5つ目の原因は血管炎です。
なぜなら、血管炎が血流・リンパ流のうっ滞を引き起こす可能性があるからです。
具体的には、遊走性血栓性静脈炎、バージャー病、ベーチェット病、巨細胞性動脈炎、結節性多発動脈炎などの血管炎がモンドール病の原因となり得ると言われています。
血管炎によるモンドール病は原疾患の治療を第一に行う必要があります。原疾患の治療によりモンドール病の改善が期待できます。
乳がん
モンドール病に関連すると考えられる6つ目の原因は乳がんです。
なぜなら、乳がんによってお胸の血流やリンパ流が妨げられ、うっ滞の原因になる可能性があるからです。
モンドール病を初発症状として乳がんが発見されることは決して多くありません。
しかし、モンドール病の背景として悪性腫瘍が原因になっている可能性があることには注意するべきです。
心配な方はマンモグラフィーや超音波検査を行いましょう。
乳がんについて心配な方は、乳がん発見のきっかけや早期発見のポイントをこちらの記事で解説しているのでご覧ください。
出典:Amano et al, Intern Med, 2018
モンドール病の診断方法
モンドール病は、胸部や腹部に現れる索状のしこりを特徴とする疾患であり、主な診断の方法は以下の通りです。
- 視触診
- 超音波検査
- 生検検査
一つずつ詳しく解説します。
視触診
モンドール病の代表的な診断方法の1つ目は視触診です。
症状や既往歴を詳しく伺った後、目視と触診を行います。皮膚直下に索状の硬結が確認されることで、モンドール病の可能性が高くなります。
特に、上肢を挙上した際にしこりが目立つ場合や、圧痛がある場合は、診断の手がかりとなります。
超音波検査
モンドール病の代表的な診断方法の2つ目は超音波検査です。
超音波検査は、痛みがなく比較的簡易で行える検査としてモンドール病の診断にも有用です。
特に、乳房にしこりが現れた場合、超音波を併用することで、モンドール病と乳がんとの区別の一助になります。
生検検査
モンドール病の代表的な診断方法の3つ目は生検検査です。
症状が長引く、再発を繰り返す、または腫瘍の合併が疑われる場合には、生検検査が検討されることがあります。組織を採取し、病理検査を行うことで、より確実な診断が可能となります。
モンドール病は、通常、数週間から数ヶ月で自然に回復しますが、症状が長引く場合や不安な場合は、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。
また、乳房にしこりが現れた場合は、乳がんとの関連性がある可能性も否定できないため放置せずに医師に相談するようにしましょう。
出典:Nandakumar et al, BMJ Case Rep, 2024
モンドール病の治療法
モンドール病は、多くの場合、経過観察で症状が改善します。通常、4〜8週間で自然に回復することが多いため、特別な治療を必要とするケースは稀です。
しかし、症状に応じて、以下のような治療法が考慮されます。
- 対症療法
- 外科的治療
- 合併症への対応
1つずつ以下で深掘りします。
対症療法
モンドール病の治療は、経過観察が基本です。症状が軽度であれば、特別な治療は必要なく、自然回復が期待されます。ただし、痛みがある場合は、鎮痛薬や外用薬を使用して症状を緩和する対症療法を行うことが一般的です。
- 鎮痛薬:痛みを軽減するために使用されます。
- 外用薬:ヘパリンを含む軟膏や温湿布などが役立ちます。
通常、経過観察と薬物治療で症状は改善しますが、痛みが強い場合や症状が長引く場合は、次の段階の治療が考慮されることもあります。
外科的治療
モンドール病の多くの患者にとって、外科的治療は必要ありません。外科的治療が考慮されるのは、症状が強く、保存的治療(薬物治療や経過観察)では改善しない場合です。
具体的には、以下のケースで外科的治療が検討されます。
- 経過観察で症状が改善しない場合
- 強い疼痛を伴う場合
外科的治療としては、切除術などが行われることがありますが、非常に稀なケースと言えるでしょう。
合併症への対応
モンドール病は他の疾患に関連して発症することがあります。
例えば、血管炎や乳がんなどの疾患がモンドール病の原因となっている場合があります。
原疾患がある場合は、原疾患の治療が必要です。モンドール病の治療と並行して、以下の治療が行われることがあります。
- 血管炎:自己免疫疾患が原因の場合、免疫抑制剤などの治療が必要です。
- 乳がん:モンドール病が乳がんの兆候である場合、乳がんの治療が最優先されます。
症状が他の疾患に起因する場合は、早期に専門医の診察を受け、適切な治療を行うことが重要です。
乳がんの早期発見のポイントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。心配な方は是非ご覧ください。
出典:Amano et al, Intern Med, 2018
モンドール病と豊胸手術の関係
モンドール病は、胸部に現れるしこりを特徴とする疾患で、豊胸手術後に発症することがあります。
豊胸手術後の胸部への圧迫や血流の変化が、静脈血栓を引き起こし、これがモンドール病を発症させる一因と考えられています。
症状と治療
豊胸手術後にモンドール病が発症した場合、しこりや痛みを伴うことがありますが、通常は経過観察と鎮痛薬で軽快します。
外科的治療が必要なことは稀であり、数週間内で自然に回復します。
豊胸後の予防と管理
モンドール病を予防するためには、豊胸手術後の適切なアフターケアが重要です。
手術後に過度な圧力をかけないようにすることや、早期の診察と適切な管理が推奨されます。
特に、胸部に不安を感じたり、しこりが現れた場合には、放置せずに医師の診察を受けることが重要でしょう。
豊胸で後悔しないための注意点をまとめた記事はこちらです。施術を検討されている方はぜひご覧ください。
【まとめ】モンドール病について理解した上で豊胸術を検討しましょう
本記事ではモンドール病とは何か、モンドール病の6つの原因、モンドール病の治療について解説しました。
モンドール病は皮膚の下の静脈やリンパ管が硬くなる血栓性静脈炎の一種です。
モンドール病の原因には以下のような原因が考えられます。
- 外傷
- 激しい運動
- きつい衣服や下着
- お胸の手術
- 血管炎
- 乳がん
当院で行っている豊胸術においてもモンドール病を発症するリスクはあります。
しかし、モンドール病の発生率は0.07〜0.96%と報告されており決して高くありません。お胸の美容手術におけるモンドール病の発生率は0.46%とする報告もあります。
モンドール病の治療としては経過観察のみで軽快することがほとんどとされています。場合によっては外科的治療や合併症への対応が必要になります。
豊胸の注意点についてこちらの記事でまとめております。心配な方はぜひご覧ください。
当院は豊胸術後のアフターフォローにも力を入れています。
豊胸を検討している方は安心してご相談ください。

監修者
- 日本形成外科学会
- 日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会所属
本田マイケル武史(本田武史)
乳がん術後の乳房再建を年間100件以上執刀してきた形成外科医。 その傍ら美容外科医として幅広い技術を習得し専門医取得要件を満たしたことを機に美容1本に絞る。自然な仕上がりでより満足度の高い施術を極めるため理論・技術を徹底的に学び沢山のゲストの要望に応え、より一人一人に寄り添った施術を行いたいという気持ちからMYCLIを開院。 開院後1年で豊胸術件数において個人院国内トップクラスに。 技術だけではなく、カウンセリングからアフターケアまでゲストに寄り添う姿勢が評判をよび数カ月先まで予約殺到。信頼できる上、気さくで物腰柔らかい人柄によりリピーターのゲストも後を絶たない。