「乳房再建に脂肪注入ってあるの・・・？」

「脂肪注入の乳房再建はどうやってやるの・・・？」

こんな悩みを持つ皆様に向けた記事です。

乳房再建は再建のタイミングや方法など具体的なイメージがつかない中で考えることが多く不安に感じるかもしれません。

乳房再建においては脂肪注入が選択肢の1つになります。本記事では乳房再建の代表的な方法、脂肪注入を用いた乳房再建の手順、そして脂肪注入を用いた乳房再建の3つのメリット・2つのデメリットを解説します。

代表的な3つの乳房再建方法

乳房再建には大きく分けて以下の3つの種類があります。

• 人工物再建：シリコンバックを用いる
• 自家組織再建：自分の組織を用いる
• 脂肪注入：自分の脂肪を用いる

人工物再建は乳房を切除した後、大胸筋の下にシリコンバックを挿入することでお胸のふくらみを作る再建方法です。

自家組織再建は自身の他部位の組織を用いてお胸のふくらみを作る再建方法になります。

大きく分けて2つあり①遊離皮弁②有茎皮弁とあります。

①遊離皮弁は、遊離腹部皮弁法（DIEP）が代表的で、腹部の脂肪を血管を付けたまま切断し、その血管をお胸の血管に吻合してボリュームを作ります。

②有茎皮弁は、腹部の脂肪・筋肉などを用いる腹直筋皮弁、背中の脂肪・筋肉などを用いる広背筋皮弁が代表的な自家組織再建の方法です。

脂肪注入は自分の他部位から採取した脂肪組織をお胸に注入することでお胸のふくらみを作ります。

脂肪注入は自由診療であり、保険診療である人工物再建・自家組織再建とは異なる点に注意が必要です。

脂肪注入による乳房再建を実際どのような手順で行うのか、以下で詳しく解説します。

脂肪注入を用いた乳房再建の手順を3ステップで解説

脂肪注入を用いた乳房再建は具体的に以下の手順で行います。

1. 脂肪の採取
2. 脂肪のろ過
3. 脂肪の注入

それぞれの手順について以下で深掘りします。

1. 脂肪の採取

脂肪注入を用いた乳房再建の1つ目の手順は脂肪の採取です。

乳房再建でお胸に注入する脂肪を体の別部位から採取します。脂肪を採取する部位は体型などから判断しますが、大腿部、腹部などから採取することが一般的です。

脂肪を採取する部位は部分痩せ効果が期待できることも脂肪注入の特徴の1つでしょう。

2. 脂肪のろ過

脂肪注入を用いた乳房再建の2つ目の手順は脂肪のろ過です。

採取した脂肪は、脂肪細胞だけではなく、壊死した細胞、麻酔液、そして血液など様々な成分から構成されます。

採取した脂肪をろ過することで不純物を取り除き、より高い生着率を目指します。脂肪のろ過を行うことで施術1年後の脂肪の吸収率は25.7%〜28.9%であると報告されています。つまり、施術一年後に70%以上の脂肪生着率が期待できる可能性があります。

脂肪のろ過は脂肪の遠心分離などの方法と比較し脂肪の長期的なボリューム保持に優れていたとする報告も。

採取した脂肪はろ過を行い、より高い脂肪の生着率を目指します。

出典：Sforza et al, Aesthet Surg J, 2016

Langridge et al, J Plast Reconstr Aesthet Surg, 2023

3. 脂肪の注入

脂肪注入を用いた乳房再建の3つ目の手順は脂肪の注入です。

採取し、ろ過した脂肪をお胸に注入し、ボリュームアップを目指します。

ろ過した脂肪であっても注入した脂肪全てが生着するわけではありません。また、栄養が行き届かない脂肪は壊死を起こし、しこりや石灰化の原因となる可能性があります。

注入時に以下の2つのポイントを抑えることで合併症に注意しながら効率良いボリュームアップが期待できます。

• マイクロインジェクション
• マルチレイヤ―インジェクション

マイクロインジェクションは脂肪を細かく注入する手法です。脂肪を細かく注入することで脂肪へ効率的な栄養供給が期待でき、壊死を防ぐことが期待できます。

マルチレイヤーインジェクションは一か所に脂肪を注入するのではなく、様々なスペースに細かく脂肪を注入する手法です。脂肪の生着、壊死の予防効果が期待できます。

また、当院では独自のカニューレを用いて脂肪注入を行います。独自のカニューレを用いることでお椀型のお胸で谷間を強調した仕上がりがより期待できます。

脂肪注入を用いた乳房再建の3つのメリット

乳房再建はそれぞれの方法のメリット・デメリットを理解した上で選択することが大切です。

脂肪注入を用いた乳房再建のメリットは以下の3つです。

• 温かみのあるお胸が期待できる
• 他の再建方法と組み合わせて施行できる
• 部分痩せ効果を期待できる

1つずつ以下で深掘りします。

温かみのあるお胸が期待できる

脂肪注入を用いた乳房再建の1つ目のメリットは、温かみのあるお胸が期待できることです。

脂肪注入は自身の脂肪でお胸のふくらみを作るため、人工物再建とは異なり自身の組織特有の見た目の柔らかさや温かい触り心地のお胸に仕上がることが期待できます。

もう一つの自身の組織を用いる再建方法である自家組織再建と比較すると、侵襲が少ないことも特徴の1つでしょう。

他の再建方法と組み合わせて施行できる

脂肪注入を用いた乳房再建の2つ目のメリットは、他の再建方法と組み合わせて施行できることです。

脂肪注入は人工物再建、自家組織再建と組み合わせることでより満足いく仕上がりを目指すことができます。

例えば、シリコンバックを入れる人工物再建の後に脂肪注入を行うハイブリッド法では、人工物再建で比較的大きなボリュームを確保しながら、脂肪注入でより自然な見た目や触り心地が期待できます。

自家組織再建の後にピンポイントでボリュームを補いたい部分を脂肪注入で微調整することも。

他の再建方法と組み合わせ施行できることも脂肪注入の強みでしょう。

部分痩せ効果を期待できる

脂肪注入を用いた乳房再建の3つ目のメリットは、部分痩せ効果を期待できることです。

注入する脂肪を採取する部位は体型などによって相談になりますが、大腿部や腹部から採取することが多いです。

大腿部や腹部などの脂肪を採取する部位は脂肪を採取する分の痩せ効果が期待できます。

脂肪注入は気になる部分の脂肪をお胸のボリュームとして活用できるお得感のある方法と言えるでしょう。

脂肪注入を用いた乳房再建の2つのデメリット

脂肪注入を用いた乳房再建のメリットを紹介しました。

メリットだけでなく、デメリットをしっかり理解しましょう。

脂肪注入を用いた乳房再建のデメリットは以下の2つです。

• お胸以外の場所に傷が残る可能性がある
• 複数回施術が必要な可能性がある

1つずつ以下で深掘りします。

お胸以外の場所に傷が残る可能性がある

脂肪注入を用いた乳房再建の1つ目のデメリットは、お胸以外の場所に傷が残ることです。

脂肪注入は脂肪を採取する部位に5-7mm程度の傷が必要になります。

一般的に自家組織再建と比較すると傷は小さく目立たないですが、お胸以外の場所にも傷が残る可能性があることは脂肪注入のデメリットでしょう。

複数回施術が必要な可能性がある

脂肪注入を用いた乳房再建の2つ目のデメリットは、複数回施術が必要な可能性があることです。

脂肪注入で注入する脂肪は自身から採取するため、体への負担も考慮すると一度に注入できる脂肪の量には限りがあります。さらに、注入した脂肪全てが生着するわけではありません。

希望するお胸のボリューム・見た目を目指す上で、複数回の脂肪注入が必要になる可能性があります。

複数回の施術が必要になる可能性があることは脂肪注入のデメリットと言えるでしょう。

【まとめ】脂肪注入による乳房再建についてしっかり理解しましょう

本記事では、代表的な3つの乳房再建方法、脂肪注入を用いた乳房再建の手順、そして脂肪注入を用いた乳房再建のメリット・デメリットを解説しました。

脂肪注入を用いた乳房再建の具体的な手順は以下の3ステップです。

1. 脂肪の採取
2. 脂肪のろ過
3. 脂肪の注入

脂肪注入の具体的なメリットは以下の3つです。

• 温かみのあるお胸が期待できる
• 他の再建方法と組み合わせて施行できる
• 部分痩せ効果を期待できる

デメリットは以下の2つです。

• お胸以外の場所に傷が残る可能性がある
• 複数回施術が必要な可能性がある

当院は脂肪注入による乳房再建はもちろん、他院で乳房再建後の方のご相談もお受けしております。

乳房再建で悩んでいる方は安心してご相談下さい。